「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」感想 無邪気な虐殺者

在宅勤務開始以来の習慣で2022年秋の深夜アニメも何本か適当に録画して見ています。

ぼちぼち最終回になりました。

今期見た中で一番ツボにはまったのが、防振り、「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」です。

再放送ですね。はい。今期録画するまで存在することすら知りませんでした。

 

 

異世界物とたぶん並んでるんじゃないかと思うVRMMO物ってやつですけど、それってもうソードアートオンライン(SAO)でとどめを刺されてるんじゃないかなぁって勝手に思っていて、もしこの作品がVRMMO物って知ってたら見て無かったかもしれません。

導入部分なんかはうーん……と思ったんですが1話の最後まで見て、なんかこれ面白いなぁとなりました。

で、この作品、ご承知のようになろう系発祥なんでWebで読めるじゃないですか。ネタバレ上等なのでWeb版読んだらおもしろいんですわ。

 

なんというか、悪い言葉を選ぶとすると(SAO)に真っ向から喧嘩売ってるんですな。

SAOはゲームがリアルに影響を与えるみたいな考え方があると思うんですが、防振りはゲームはゲーム、リアルはリアル。せっかくだからリアルでできないことをするのがゲームみたいな考え方なんですね。

登場人物たちがリアルを犠牲にしてNew World Onlineにアクセスしているような描写は無く、楓=メイプルはリアルに影響が出たら何のためらいもなくゲームを休むくらいです。

あくまでも遊び。遊びの世界ではリアルではできないことがしたいし、できる。なんというかゲームっていうのが一部の人にとって一種のユートピア世界みたいになってるっていう世界観なんですかね。

もちろんペインなんかはもしかしたらリアルを犠牲にしてゲームをしてるのかもしれませんが作中では描かれてません。理沙=サリーはリアル事情でゲームに入ってこれなかったけどそれだけの話です。まぁ、ゲームをやりたいから勉強をがんばるみたいな関連性はありますけどね。

考えてみれば筒井康隆作品にやられていて、さらにその前には海外の超有名推理小説でそういう設定に触れていたっていうのもあるんで、架空の作品内の架空の作品みたいなのには俺は親和性が高いんだろうと思います。

防振りで作中リアルが描かれているのは楓と理沙の2人だけですけど、この子たちが架空の世界で大冒険をするっていう設定自体が好きっちゃ好きなんだろうな。

あとは、ときどきぶっ困れる某掲示板風の書き込みとか運営の嘆きがすげーおもしろい。

一歩引いたところからメイプルの奇行を冷めた目で見てる。

運営さんたち大変そうだなぁと思いますが、このゲーム自体がメイプルがいつの間にか強くなるようにデザインされているって理解すれば……。ああ、さらにやりきれないですな。

 

主人公である楓=メイプルに主人公臭がしないっていうのもツボにはまった要因かもしれません。

楓の木からみたら敵だったり友だちだったりする面々の方がよっぽど主人公くさい。

ペインもそうだしミィも。

上にも書いたようにペインはリアルの生活ぼろぼろだったりするかもしれないし、ミィは今どきの女の子が主人公の物語では主人公はれそうだし。

俺はあんまりそういうことをしないんだけど、登場人物の描かれていない部分を想像して楽しむ人たちにはそういう楽しみがあるかもしれません。

とはいえ少しは想像しちゃうこともあってあの人とあの人はリアルではこういう関係性なのかなぁなどと。

話を戻すとメイプルはなんとなく直感的にプレイして変なアイテムとかスキルを手に入れちゃうんで、目標があって動くって感じじゃないから主人公っぽくないんですよね。ゲームが好きなわけでもなく慣れているわけでもない。だからゲームに慣れている人なら絶対にしないこともできちゃう。

勝つことよりも楽しむことに重きを置いてるんですよねぇ。

メイプルの相方で、リアルでも相方なサリーはゲームが好きでいろんな知識もありスキルも高いっていう対照的な設定で、メイプルには足りてないところを補っているという見ていて気持ちがいい関係性です。楓の木の他の面々はもちろん、ライバルとなるギルドの人たちもそんな感じ。メイプルのことをライバル視危険視しながらも楽しんでる様子は好ましく思ってるんだろうな。

 

さて、この作品への入り口はアニメだったわけですが、Webで原作の方を読むと……

やっぱ断然原作の方が俺にとっては面白いですね。

アニメって好きなメディアじゃないんですね。根本的に。じゃなかったら今までハマったとはっきり言えるテレビアニメ作品が1本だけってことにはならないと思うんですよ。

アニメ見ていいなと思っても原作付きの場合原作にあたるとそっちの方がいいと思っちゃう。特に小説の場合は顕著ですね。

アニメですごく残念だったのが、Webで読んでてくっそわらって変な笑いが止まらなくなったところがいくつかカットされてしまっていたことです。きっとスタッフのツボと俺のツボが合ってないんでしょうね。

アニメになった部分で言うと

 

「そのオーブ、私のだから!」

とか

「自爆系の威力なら……大丈夫!」

とか……

 

アニメってなかなか真剣に見れないんで漏れだったら申し訳なんだけど、このセリフ楽しみにしてたんでたぶんやってないと思います。

なんたる無邪気で無慈悲な発言。まわりも怒るとかじゃなくてあきれる系です。

メイプルってゲームの中では常に無邪気で面白いことがあったらゲームの中だしやってみるっていう感じで常に楽しんでるんですよね。ボス戦で何時間もなんて俺には無理だけどメイプルは大変だけどその大変さも楽しんでる感じ。

 

来年頭からアニメ2期をやるということでもちろん見てみます。たぶんあのあたりまでやってまたメイプルが周りをあきれさせるんだろうなぁ。

 

この物語のラストはたぶんあの2人のバトルなんでしょうね。バトルが始まるところで物語が終わる王道パターンなのか、ちゃんと描き切るのかわからないです。

もしちゃんと描き切るのなら……、そのバトルは熱血感動の中決着がつくんじゃなくて、作中で見ている人も読者も口を半分空けて「はぁ?」っていうような決着になるのかもしれないです。

というか、この物語にはそういう決着こそふさわしんじゃないかと俺は思ったりしています。