思い出の中での最高のカツカレー
先日、日乃屋カレーのカツカレーが予想外に俺好みだったという話を書きましたがね、あのカレー食って思い出しちゃったんですよ。
俺にとっての伝説的なカツカレーをね。
荒川放水路の建設によって川と川に挟まれた狭い地域が東京にはいくつかあります。
その一つに「新田」というところがあります。
同じような立地でも北千住は鉄道が通るターミナルですが、新田には鉄道は通っておらず公共交通はバスだけです。
若かりし日、俺はそこにあった現場で仕事をしていました。
荒んでました。いわゆるデスマーチです。上の方の人の中には会社に住んで時々家に帰るような生活をしていた人もいました。当時まだ俺は下っ端も下っ端だったんでそこまでじゃなかったですが、勤怠もボロボロでした。
脇道それまくりですが、どのくらい荒んでたかという話も書いておきますか。
当時バブルがはじけたころで、いわゆる「リストラ」っていうのが横行してたわけですよ。まだバブルの時に大量採用しちゃった俺当たりの世代はタゲられるわけですよ。入社数年だと実績がとか言ってもたかがしれてるんです。いやな話ですが、その時どういうプロジェクトのどういう持ち場にいたかで運命が決まっちゃうようなもんなんですね。
運です。単純に、運。
俺はその時まさに燃え盛ってるところにいたので対象外でした。で、一緒に仕事してた人がリストラになるとかいううわさ話も聞こえてくるんですよ。
正直、うらやましいと思ったもんね。特に同じプロジェクトの人だと、変わってよと、俺と変わってよと。うん。逃げたい、今すぐ逃げ出したい、そう思いながら毎日仕事をしていました。
病んでますよね。病んでるときって自分が病んでるって思わないもんなんだぜ。そのことに気づいたのはこのあと10年後くらいってのが俺の残念なところですw
話を戻します。
そうなると、もう楽しみが昼飯くらいなんです。オフィス街でもなく昼飯食える店ってすごく限られてるんです。コンビニと数件の店をローテーションです。
そんなローテーションに入れていた店の一つで出されていたカツカレーが今でも忘れられません。
その店はとんかつ屋なのか、カレー屋なのか、はたまた定食屋なのか?
どれも違います。
ラーメン屋です。店の名前は意識してませんでした。なので覚えてません。ラーメン屋です。ラーメン屋のカツカレーです。
当時はそういう言葉はなかったですが「町中華」ってやつです。当時は今流行ってる個性があるラーメン屋ってとても少なかったと思いますし、あってもネットもケータイも無い時代だから情報が出回ることもあんまりありませんでしたね。友だちがバイトしてたラーメン屋は店長が「うちはラーメン屋だからご飯ものは出さない」という骨がある人だったらしいですがそういう店の方が少数派だったと思います。今思うとうまい店でしたけど当時はちょっと安くしてくれるラーメン屋っていう意識しかなかったな。
カツカレーの話に戻ります。
まだ平成に入ったばかりだったから当たり前なんだけど昭和の香りがする店でした。
当時の店は今じゃ観光資源になってる食品サンプルを飾ってるのがわりと普通でした。その店もサンプルを飾ってました。
そのサンプルのカツカレーがね、もう、ありえないくらい残念!
量が少ない、カツが小さい、歪んで隙間が見えてる。そのサンプルを見て食欲をそそられる人はだれ一人いないと断言できる!
でもまぁ勇者はいるわけで、頼むやつはいるんですよ。荒んでましたからね。なんでもいいから娯楽が欲しかった。
で、10分くらい待って実際にカツカレーがテーブルの上に乗ると
……
「まいりました」
スプーンを付ける前に投了です。
当時俺たちみんな若かった。食欲も旺盛でした。気持ちも荒んでたから食事でストレス発散もしていた。
そんな連中がそろいもそろって見た瞬間に「これは食いきれないかも」と思ってしまう量にまず圧倒されました。
かなり多めのライスにたっぷりカレーがかかってて、その上に皿からはみ出して存在を主張する脂っこそうなカツ。いろんな意味でたまらん。
一口カツをかじるとカレーがかかってないところは衣サクサク肉はがっつりもちろんうまい豚の脂身もしっかり、カレーがかかったところも味が付いてまたうまい!
ご飯とカレーもうまい!ここは本当にラーメン屋なのかと思うくらいうまい!
うまい!うまい!うまい!……
全然減らねぇorz
最初の感動はどこへやら、見た瞬間に予感で来た修行の始まりです。もったいないから食わなきゃって思いとこれ以上食うとやばいっていう思いが交錯します。悲惨な職場だったんで「食いすぎて体調悪くなったら早引けできるかも」っていうのもあったかも。
あのカツカレー、忘れられないですね。
ちなみに、そのお店はそういうお店なんで当然大盛もやってます。当時確か100円追加だったような。大盛に挑んだ猛者もいましたよ。食切るやつだっていました。今にして思えば大盛カツカレーを頼む人はなにかいやーなことがあった人だったような気がします。
Google Street viewでそのあたりを見てみましたがもうその店はありません。
二度と味わえないという思い出補正が強烈に入って、どこでカツカレー食っても決して越えることができない最高のカツカレーになってしまいました。