読書感想文 山本 巧次 著 『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』

もうすぐお盆です。東京のお盆は7月だけど一般的にはお盆といわれてます。

この季節になると実家に帰省する人が多いですが、生まれ育ちが東京だった俺には無縁。親戚のところに行くというのと帰省をするというのとではたぶんかなり心持ちが違うんだろうなと思います。

この本を本屋で手に取ってみた理由はタイトルがおもしろそうだったからですが、めくってみて章立てに羅列された地名を見てちょっと読んでみるかという気になりました。

少し離れたところではありますが自分のふるさとの細かい地名が出ていると興味がわくんですよ。

で、ちょろっと読んでみて買う気になりました。

最後まで読みました。

おもしろかったです。

いわゆる推理小説とは違うと思います。絶対に本格推理ではない。

タイトルから想像できるように謎解きというより江戸時代の事件を最新科学で白黒つけるといった趣向で、事前の全貌も読み慣れてる人なら「こういうことなんじゃないかなぁ」と想像できるように書かれています。

友人にこの小説の設定を話したところ「ラノベだよね」っていわれましたが、言い得て妙であえて誤解を招く表現をすると「大人向けラノベ」ですね。

現代社会に生きる女性が江戸時代と行き来するすべを知って、その時代で自分が本来生きている世界では得られなかった高揚感に包まれるといった話になっています。

こういう設定の場合、シリーズが進むと時代の行き来ができなくなるピンチが訪れるんじゃないかと思いますが、時代背景と設定から江戸の大火に巻き込まれてってことになるんじゃなかと想像していたりします。

そういう想像を巡らせる楽しみもあるのでこのシリーズはもう少し読んで見よと思っています。

 

最後に蛇足かつネタバレですが、一番最後に明かされる設定について。

全く状況は違いますが閉塞感を抱えた時代を生きる男と女が別の時代で出会い、自分が生きている時代では得られなかった幸福を得るというような全体の筋書きになってるのかなぁとも思いました。

物語を評価する人の中には登場人物が逃げることをよしとしない人もいるでしょうが、そういう物語がおもしろいと思う人もいれば救われる人だっているかもしれないんですよね。逆に救いがない物語を求める人だって少なからずいるわけですから。

 

こちらにうつってきて最初の読書感想文がこれになるとは夢にも思わなかったです。時代小説自体ほぼ読まない人間ですからねぇ。